日本の医療の未来を考える会

第18回「日本の医療の未来を考える会」リポート

第18回「日本の医療の未来を考える会」リポート

第2部

『AIの最新手法と医療会への活用提案』

■予防医学へのAIシステム導入イメージ

 予防医学にAIを導入する場合、どのようなイメージがあるのかを紹介します。予防医学に必要なことは2つあります。1つは、定期的な診断による患者の状況把握。もう1つは、アドバイスによって患者に行動変容を促すことです。ただ、全ての人にこれを実施し続けることは、医師の数などから考えても、現実的には不可能です。しかし、定期的な状況把握と改善行動の提示を、AIを使って自動化することが出来れば可能になります。データさえ蓄積できれば、人間に変わってAIが行うことが出来るのです。

 AIがカバーできる予防医学の範囲は、AIが優秀であれば、データを蓄積するほど広くなっていきます。予防医学に必要なデータは、ウェアラブル機器で取得出来るデータと、カメラやマイクやセンサーから取得出来るデータの2種類があります。前者には、心拍数、血糖値、呼吸数、体脂肪率、走行距離、歩数、睡眠時間、視野、瞬きの回数などがあります。後者には、動作、姿勢、音声などがあります。

 予防医学AIは、病気の予兆の早期検出だけでなく、地域全体の病気の予測や生活習慣病の地域特性なども発見する可能性があります。特にウェアラブル機器による情報が多く集まる場合は、生活習慣病を発症する人が、どのような食事や行動をするのか、どのような身体特性があるのかを、AIが知ることになります。それにより、医療分野以外で活用できる情報やサービスを、他分野へ提供出来るようになる可能性があります。

 予防医学では、行動変容をどう促すかが大きなテーマになります。新しい行動を習慣化させるのに活用出来るのがゲーミフィケーションです。ゲームの要素を入れることで、楽しみながら行動変容プログラムを実行することが出来ます。AIを使うことで、ゲームの内容を個人に合わせてチューニングすることも出来ます。

 ウェアラブル機器やカメラやマイクで取得出来るデータに、個人的な情報であるDNA情報を加えることで、その人が将来にわたってどのような病気になるリスクが高いのか、高精度に予測できる可能性があります。

 予防医学にAIが利用されるようになると、その延長線上には介護福祉のAI化が見えてきます。更に、訪問医療や訪問介護まで包括することが出来るでしょう。また、遠隔地にいる患者に対する医療行為も、AIの力を借りることで可能になるかもしれません。遠隔医療が実用化すれば、この仕組みを国内だけでなく、海外に広げ、日本の質の高い医療を世界中に提供出来るようになると考えています。

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■予防医学へのAI活用の9DWとしての提案事例

 予防医学にAIを活用している海外の事例を紹介します。

・海外事例① 階層化病態分類の自動化
 膨大な量のカルテが書かれていますが、その約80%が利用されていません。この状況を改善するため、カルテを一定の形式に直して、データベースとして保存するのです。すでに海外では始まっているので、日本でも始めたほうがよいでしょう。

・海外事例② 睡眠状況のモニタリング
 睡眠のモニタリングを自動化し、レポートを書くのも自動化して、これをAIにどんどん蓄積させ、睡眠時間がどういった意味を持つのかを研究させます。睡眠段階、呼吸の状態、足の動きなどの検知も行います。

・海外事例③ 服薬のモニタリング/リマインド
 服薬時刻になると患者にリマインドし、患者は服薬時の動画をスマートフォンで撮影し、それをクラウド上のAIに送ります。AIは患者の顔識別を行い、薬の種類や量のチェックも行います。更に、データはレポート化されて医療機関に送信されます。

・海外事例④ 関節置換手術前後のリハビリサポート
 数百のパーソナライズされた患者データと、機械学習に基づくプログラミング作成アルゴリズムにより、患者一人一人に最適なリハビリプログラムを作成します。

・海外事例⑤ サプリのレコメンド/販売
 いくつかの質問に答えてもらい、その結果から、それぞれの人に適したサプリメントをレコメンドします。データが蓄積されていくに従い、どんどん精度が高くなっていきます。

・海外事例⑥ 病気の治療薬となりうるペプチドの特定
 特定の病気の治療に有効な分子の組み合わせを、食品の中から検出します。新薬開発の補助的な役割を果たします。

・海外事例⑦ 同程度の病気リスクのある患者をグルーピング
 リスク要因を共有する患者の集団を作り、トポロジカル・データアナリシスという新しいアプローチ方法で膨大なデータを分析し、将来の病気になるリスク、医療費などの予測に役立てることが出来ます。

・海外事例⑧ 医療データ管理用プラットフォーム
 健康に関するデータを個人が管理できるプラットフォームを提供します。データを誰もが理解しやすい見せ方にして提供することで、人々が健康のためのより適切な行動をとれるようになります。

・海外事例⑨ 胎動のモニタリング
 胎動のデータを取得できるウェアラブルデバイスをお腹に貼り、その情報がスマートフォンやPCに送られてきます。胎児の健康状態を予測し、アドバイスすることに利用されています。

・海外事例⑩ トレーニング/ダイエット/リハビリのサポート
 人体の動作、心拍数、消費カロリーなどが測定できるウェアラブル機器でデータを取得し、トレーニングや食事やリハビリについて、AIがレコメンドします。アスリートのトレーニングにも活用できると考えられます。

 以上が、予防医学に関する主な海外事例です。国内事例についても調べてみましたが、見つかりませんでした。

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