日本の医療の未来を考える会

第19回 医療機関のBCP(事業継続計画)に関わる厚生労働省の取組(松岡輝昌 氏)/真に機能する病院BCPとは(小林直樹 氏)

第19回 医療機関のBCP(事業継続計画)に関わる厚生労働省の取組(松岡輝昌 氏)/真に機能する病院BCPとは(小林直樹 氏)

2017年11月22日(水)、17:00~18:30、衆議院第一議員会館の国際会議室にて、「日本の医療の未来を考える会」の第19回勉強会を開催いたしました。

集中出版 松岡輝昌詳細は、月刊誌『集中』2018年1月号にて、事後報告記事を掲載いたします。
まず、当会主催者代表の尾尻佳津典より、挨拶させていただきました。

「BCPは医療機関にとって、非常に責務の重いものですが、その策定を厚生労働省から求められています。災害時における救急の医療を充実させ、継続させることについて、国から大きな期待が寄せられているわけです。しかし、それを受ける医療機関には、大きな負荷がかかります。マニュアルを読んでみましたが、理解できない部分がたくさんありました。本日の勉強会に期待しております」

集中出版 日本の医療の未来を考える会続いて、当会国会議員団代表の原田義昭・衆議院議員にご挨拶いただきました。

「今日の勉強会のテーマはBCPです。災害が起きたときにどうするかという話ですから、目立たなけれど、現在の医療構造の中における非常に重要な分野だと考えています。専門の先生方に講演をしていただき、ご出席の皆さまによる活発な議論が行われることを期待しております」

今回の講演は、厚生労働省医政局地域医療計画課医師確保等地域対策室長の松岡輝昌氏による『医療機関のBCP(事業継続計画)に関わる厚生労働省の取組』と、鹿島建設株式会社建築設計本部設備設計統括グループ統括グループリーダーの小林直樹氏による『真に機能する病院BCPとは』と題するものでした。以下はその要約です。

医療機関のBCP(事業継続計画)に関わる厚生労働省の取組
講師・厚生労働省医政局地域医療計画課医師確保等地域対策室長
松岡輝昌氏

■BCP(業務継続計画)とは
 BCPは一般的には次のように定義されています。

集中出版 松岡輝昌「災害時に特定された重要業務が中断しないこと、また、万一事業活動が中断した場合に目標復旧時間内に重要な機能を再開させ、業務中断に伴う顧客取引の競合他社への流出、マーケットシェアの低下、企業評価の低下などから企業を守るための経営戦略。」「バックアップシステムの整備、バックアップオフィスの確保、安否確認の迅速化、要員の確保、生産設備の代替などの対策を実施する(Business Continuity Plan=BCP)。ここでいう計画とは、単なる計画書の意味ではなく、マネジメント全般を含むニュアンスで用いられている。」(内閣府の防災情報ページより抜粋)

 しかし、このままでは医療分野にはなじまない部分があります。重要業務が中断しないことと、復旧を早くすることが本質ですから、医療にあてはめると、「災害の超急性期から慢性期へと変化するフェーズに対応し、病院機能の損失をできるだけ少なくし、機能の立ち上げ、回復を早急に行い、継続的に被災患者の診療を行うための計画」ということになります。

■東日本大震災後の厚生労働省の取り組み

日本の医療の未来を考える会 松岡輝昌 東日本大震災があった平成23年7月~10月に、「災害医療等のあり方に関する検討会」が開かれました。その報告書には、「一般の医療機関については、従来通り、医療機関自らが被災することを想定して、防災マニュアルを作成することが有用である。」「病院の災害対応マニュアルは、初期対応に重点が置かれており、業務継続計画としての性格を有するような長期的な対応について整備されることは少ないと考えられるため、長期的な対応も想定して各病院が作成することが望ましい。」と記載されています。

 また、この検討会を踏まえ、「災害時における医療体制の充実強化について」という厚生労働省医政局長通知を出しています。そこには、「自ら被災することを想定して災害対策マニュアルを作成するとともに、業務継続計画(BCP)作成を医療機関に対して努力義務とする」ことなどが盛り込まれています。

 BCP策定がどの程度行われているかを分野ごとに調べたところ、医療施設では、BCP策定済みが7.1%、策定中が10.3%で、両者を合わせても20%に届いていません。福祉施設では、それぞれ4.5%と6.9%で、合わせても10%強でした。電気業が合わせて70~75%に達しているのと比べると、大きく遅れています。医療施設でも、災害拠点病院に限ると、策定済みと策定中を合わせて30%程度になりますが、それ以外の病院では合わせても15%程度という低さでした。このようにBCPの策定が進んでいないのを受けて、『BCPの考え方に基づいた病院災害対応計画作成の手引き』を作り、病院に配布したところです。

■熊本地震後の厚生労働省の取り組み

集中出版 松岡輝昌 熊本地震があった平成28年5月~12月に、「医療計画の見直し等における検討会」が開かれました。熊本地震では、DMATが支援した病院が14ありましたが、そのうちBCPが作られていたのは1病院だけでした。そこで、災害拠点病院でBCPがないのはおかしいということになりました。そして、検討会後に出された「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について」という通知には、災害拠点病院の目標として、「被災しても早期に診療機能を回復できるよう、業務継続計画の整備を含め、平時からの備えを行っていること」と記載されています。こうして、BCP策定を災害拠点病院の指定要件にする方針が決まったのです。

■これからの厚生労働省の取り組み

 平成29年3月に「災害拠点病院指定要件の一部改正について」という通知が出されていますが、そこに「①被災後、早期に診療機能を回復できるよう業務継続計画の整備を行っていること。②整備された業務継続計画に基づき、被災した状況を想定して研修及び訓練を実施すること。」という新たな要件が加えられています。今までは努力義務であったBCPの策定が、災害拠点病院については指定要件の1つとして義務化されることになったのです。

 そこで、平成29年度の新規事業として、「事業継続計画(BCP)策定研修事業」が始まっています。BCPをどのように作るのかについて講義したり、BCPのひな型を作ったりすることになっています。

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