2018年4月25日(水)、17:00~18:30、衆議院第一議員会館の国際会議室にて、「日本の医療の未来を考える会」の第23回勉強会を開催いたしました。
詳細は、月刊誌『集中』2018年6月号にて、事後報告記事を掲載いたします。
まず、当会主催者代表の尾尻佳津典より、挨拶させていただきました。
「今回のテーマは、『2020年オリンピック・パラリンピックへ向けて、厚生労働省が今後取り組むこと』です。厚生労働省から3人のプロの方においでいただき、講演していただくことになりました」
続いて、当会国会議員団会長の原田義昭・衆議院議員からご挨拶いただきました。
「オリンピック・パラリンピックまであと2年。多くの外国の人々に来ていただくことになるので、予期せぬことが起きる可能性があります。テロに対するセキュリティは、国の重要な仕事ですが、医療・保険分野においても万全の体制を整えておかなければならないと思います。今日は厚生労働省が何を考えているのか、お聞きしたいと思っています」
当会国会議員団の大隈和英・衆議院議員からもご挨拶いただきました。
「東京オリンピック・パラリンピックを起爆剤に、観光立国を目指して、日本をさらに魅力的で豊かな国にしていこうという中で、大切なことがあります。日本側の医療の受け入れ体制が1つ。もう1つは、日本の医療に対して、海外からのインカムが得られるような仕組み作りではないかと考えています」
今回の講演は、3人の講師によって行われました。厚生労働省医政局総務課医療国際展開推進室長の徳本史郎氏による『外国人患者受け入れ環境整備について』、厚生労働省大臣官房厚生科学課長の浅沼一成氏による『化学テロ対策、生物テロ対策について』、厚生労働省健康局結核感染症課長の三宅邦明氏による『感染症対策について』と題するものでした。以下はその要約です。
『外国人患者受け入れ環境整備について』
講師・徳本史郎氏
■医療国際展開推進室とは
医療国際展開推進室は、日本の医療技術・サービスを国際展開するために生まれました。平成25年に医療国際展開戦略室としてスタートし、平成26年に医療国際展開推進室に改組され、現在に至っています。基本的には、日本の持っている医療技術などを、海外に展開することによって、日本が海外の方々に貢献するといった形で、日本の医療に対する信頼を勝ち取るというのが目標です。その副産物として、医薬品や医療機器の国際展開につながればと考えています。アウトバウンド業務とインバウンド業務をバランスよくやっていますが、本日の話はオリンピック・パラリンピックに向けての外国人患者受け入れの環境整備についてですから、インバウンド業務の話が主体になります。
■政府の取り組み
現在、在留外国人は247万人、訪日外国人は年間2869万人で、ここ数年で訪日外国人がかなり増えてきています。インバウンドに関しては、「日本再興戦略2016」の中に、外国人患者受け入れ体制が整備された医療機関を、2020年までに100か所整備することを目標にすると書かれていました。しかし、「未来投資戦略2017」では、目標を前倒しして2017年度中の達成を目指す、となっています。また、外国人患者の受け入れ態勢の裾野拡大を進めていくことになっています。
訪日外国人に医療を提供するために、さまざまな新たな課題が出てきました。そこで、政府の健康・医療戦略推進本部の下に、「訪日外国人に対する適切な医療等の確保に関するワーキンググループ」が設置されています。多様な問題を解決するためには、関係省庁の連携が必要です。
■厚生労働省の取り組み
厚生労働省のインバウンド施策は、「医療機関の整備」と「言語対応」という2つのポイントで進めてきました。
医療機関の整備については、医療通訳や医療コーディネーターが配置された拠点病院を整備し、その拠点病院が地域の病院の相談に乗れるようにしました。さらに、院内表示や問診票などの多言語化も必要で、こうした支援も行ってきました。
言語対応に関しては、医療通訳の教育やクオリティ担保など、いろいろな課題があります。厚生労働省としては、医療通訳の養成プログラムを作成したり、養成を支援したり、また質の担保のために、認定制度の研究を進めてきたりしています。
医療機関における外国人患者受け入れ環境整備事業は、平成30年度の事業予算が1億4000万円弱で、3本の柱があります。
1本目の柱は、地域における外国人患者受け入れ体制のモデル構築事業で、これまで拠点病院の整備を行ってきましたが、訪日外国人が増えるに従い、特定の医療機関に集めるのでは間に合わなくなっています。拠点病院を整備するだけでなく、地域の医療機関が共同で取り組むべきと考えています。外国人患者の受け入れ体制を地域でどのように構築していくのかを議論するモデル事業を、平成30年度からスタートさせます。
2本目の柱は、団体契約を通じた電話医療通訳の利用促進事業です。訪日外国人は大都市だけでなく地方にも行くようになっています。そういう地域の医療機関は、外国人患者が毎日くるわけではないので、医療通訳を常駐させるのは困難です。また、英語以外の希少言語に関しても、医療通訳を置いておくことはできません。このような患者の少ない地域や希少言語に関しては、電話通訳で対応することができます。電話通訳が新たなビジネスとしてスタートしているので、その利用を推進する事業を行います。
3本目の柱は、外国人患者受け入れ環境整備推進事業で、医療通訳や医療コーディネーターの配置を補助するという事業です。
外国人患者受け入れ体制が整備された医療機関は、①JMIP認証病院、②通訳配置病院、③院内体制整備病院、④訪日外国人受け入れ可能な医療機関、という4段階があります。2017年度中に100か所整備することが目標となっていたのは、①~③の病院で、これはすでに達成され、現在は111施設になっています。④には1255施設が登録されています。このように裾野を広げながら、外国人患者が日本で安心して医療を受けられるように、厚生労働省として取り組みを進めているところです。
LEAVE A REPLY